INTERVIEW

2018.01.12UP|インタビュー

農家さんインタビュー 下村さんの話

石川県加賀市での梨生産体験コース。その受け入れ先の奥谷梨生産組合で梨農家をしている下村さんは、都会から加賀に来て、縁あって梨農家をされています。そんな下村さんに梨農家になったキッカケや、楽しいところ、大変なところなど、お話をお伺いしてきました。

梨農家の下村さん1

農業をはじめたキッカケは?

元々は関東に住んでいて、農業とはまったく無縁でした。以前の仕事では転勤が多々あり、石川県にやってきました。こちらに来てから、縁あって梨の収穫のアルバイトとして奥谷の方と知り合いました。2年くらいアルバイトをしたところで空き農園がでて、やってみないか?と声をかけてもらいました。園主として、今年で2年が経ちました。

それまでの仕事と梨の仕事を比べてどうですか?

梨の方が合っているかもしれないですね。人にとやかく言われんし。サボればサボっただけ仕事が遅れるので自己管理できなくてはいけないですが、決められた枠のなかにいる会社員よりかはいいかもしれない。こちらの生活が長いと、いまさら都会に戻れないですね。

この仕事の楽しい所はどんな所でしょうか。

自分で考えて、自分の意思が反映することでしょうか。なによりもやっぱりこれ(梨)が出来た時じゃないかなぁ。当たり前かもしれませんが、人に食べてもらって、美味しかったよーって言われるときです。最初は指の先のような小さい実から始まるんだけど、それが少しづつ大きくなるのは、見ていて愛おしい。大きな色づいた実となったところで、木からもぎ、その場でかじってみて「お、甘いぞ」と感じられるのは喜びです。

逆に、難しい所や大変な所はどんな所ですか?

剪定です。全くの素人でしたので、指導を受けながら手探りでやってきました。梨は剪定で決まるから、やり方ひとつで実のなり方も違い、とれる量がまったく変わります。自分でこの園をやり出した去年は、見よう見まねで、深く理解しないまま追いつかない作業をこなした感じでした。おかげで収穫量は散々でした。今年度は多くの先輩に秘訣を聞いて、自分でも勉強をしながら剪定し作業を進めたら、倍くらいの収穫になり、収穫作業が追いつかなくて大変でした。いい梨を作るというのは、数年がかりで木を整えていくので、本当に奥が深いです。
でも達成感はあるかな。あれだけの本数の木を管理して、梨がたわわに実っていく。収穫の2ヶ月は稼ぎどきなので休みも少なく、家族にも手伝ってもらいながらで大変なこともあるけど、終わったら寂しい気持ちです。収穫して梨が無くなったあとをみると、また、ここから1年間始まるんだって。この2年で多くを学び、手応えをつかんだので、3年目はいよいよ本格化していくので、いまから楽しみです。

ご自身で園主をされるようになって、はじめはどんな感じだったんでしょうか。

この仕事って収穫まで収入が無くて、1年まとめて入って来るから、軌道に乗るまでのやりくりがキツかった。家族もいるので、最初の頃は朝に新聞配達をして、昼間は園に出て、夜中はコンビニのバイトをしてという生活でした。移住して梨栽培をしたい方は、最初はどこかの園で覚えながらやったらいいんじゃないかな。そうでないとよほど気合い入れてかないと仕事自体よりも生活がキツイ。でも若い人が来るのは歓迎だと思います。ここの園も全国の農家さんと同じように平均年齢高いですしね。ここ10年で10人ほどの若手が入って来ている日本でも珍しい園でもあり、私もその一人です。そういう意味では、入りやすい雰囲気はあります。

体験参加を検討している人に一言。

よく言われるのが、「冬はずっと遊んでんだろ、夏だけでそんな収入あっていいな」っていうもの。でもそんなことはない。ペースは落ちますが、冬はもっとも大事な剪定の時期です。雪のなかで作業することもありますよ。春からは作業量が一気にあがり、夏に台風が来れば、大事な梨が落とされないかと気を揉みます。そして1年を費やして、一生懸命育てた梨が、収穫直前に雹かなんかが降ってもアウトです。自然には抗えないところもあり、そんな甘くないって意見も確かにあるけど、それでもやればやっただけ梨は応えてくれる。決められた月給じゃなくて、自分が手塩にかけただけ収入にもなるのが魅力です。 自然が好きな人で、ものを作るのが好きな人だったら、考えてみてもいいかもしれない。今は、チャンスかもしれないですよ。全国的にみても若い成り手が少なく、跡継ぎがいないとこも多いです。できれば自分が関わった農地は、きれいなまま次世代につなげたいと思っている方はたくさんいます。まずは、構えずにこちらに来て、体験してみてください。素人の私でも始められたのだから、みなさんにもできることはたくさんありますよ。

梨農家の下村さん2

5年前は梨農家になるとは露ほども考えていなかった下村さんですが、いまでは、農業の奥深さに惹かれているそうです。新しく何かが始まることは、ちょっとした事や偶然の縁で始まっていくものなのかもしれませんね。この日は下村さんの奥様やお子さんも収穫のお手伝いに来ていました。こうやって家族で仕事ができるのも農家の仕事の良い所。都会とはリズムの違う生活を、みなさまも体験しに来てください。